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セミナー報告 空き家活用術〜異業種から参入・民泊の作り方〜 

第3回 空き家活用術〜異業種から参入・民泊の作り方〜
山中一義氏(株式会社ネジコ) 2019年10月9日開催

 

「空き家をどうする?解決のヒントを見つけるセミナー」の第3回目。空き家を民泊として再生した(株)ネジコの山中一義氏が登壇した。レトロモダンな宿泊施設に生まれ変わった築100年の長屋に集まった参加者は、これからの空き家活用を考えながら話に熱心に話に聞き入った。

 

 

 

 

#きっかけは訪日外国人観光客の急増

 

大阪市生野区の鶴橋は、JRや近鉄、大阪メトロが集まるターミナルで、おいしい焼肉店が多いことでも知られる。今回、セミナーが行われたのは、鶴橋駅から徒歩6分の住宅地にある築100年の三軒長屋。大正時代に建設され、長らく空き家となっていたが、リノベーションされ、今はレトロモダンな民泊「集家(つどや)」として国内外からゲストを集めている。夜になると、この家のレトロな玄関灯が街路をぽっかり照らす様子がとても温かく感じる。

 

 

空き家だった古い住宅を、民泊として再生し、運営しているのはネジの輸入会社(株)ネジコだ。なぜネジの会社が民泊事業に参画したのか。登壇した山中氏はそんなきっかけから話し始めた。

「貿易業ということもあり、代表をはじめ、社内には語学力が高く、旅行好きの社員が多くいました。そんな私達は、近年、増えてきた訪日外国人観光客に注目し、どんな宿泊施設があったら楽しく思うだろう、いったい誰がどんな宿泊施設を求めているだろうと考え始めました。みな国内外のあちこちでいろいろな宿泊体験を積んできているので、〝ゲストの身になって〟宿泊地としての大阪のあり方や環境を考えやすかったと思います」

最初はコンパクトなワンルーム、小さなマンションの一室から民泊事業を始めた。訪日外国人観光客の急増で、宿泊施設数が足りなくなり、まずは「ベッドの提供」が急務だったからだ。その後、民泊に関する法律が整備され、大阪では、「国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例制度(特区民泊)」の認定を受けると、民泊ができるようになった。

「他業種から民泊事業への新規参入が増えてくる中、競合の激しくなりそうなワンルームを避け、ちゃんと許認可がとれる物件での事業に転換することにしました。加えて、従来型のホテルや旅館とも差別化する観点から、ファミリーやグループなど〝多人数で訪日している観光客〟に焦点を絞ることにしました」(山中氏)という。

 

#古き良き時代の日本の情緒と生活文化を届ける

多人数の旅行者に向けて、手軽で魅力的な宿泊施設をどう創出していくか。そこで注目したのが、持ち主が退去して誰も住んでいない古い戸建て住宅や長屋だった。もともと住宅なので、部屋数は多く確保できる。
「現代のライフスタイルでは敬遠されがちな和室や使いにくい水まわりも、見方を変えれば、古き良き日本の情緒が残っているし、リフォームすれば使いやすい宿泊施設になります」と山中氏。

民泊施設にリフォームするにあたって、さまざまな工夫を凝らした。トイレや浴室、洗面室の設備を刷新して清潔感を大切にした。連泊客が使うキッチンやダイニングには、使い勝手のよい調理器具や簡単な食器を備えた。内装のデザイン面では、昔からの建具を活かしたり、茶の間に琉球畳を敷き詰めたり、日本らしい生活感や演出するとともに、旅先ならではの非日常感を混在させた。

 

 

「単に寝る場所を提供するだけでなく、〝唯一無二の体験〟を提供できるスペースをつくりたい。日本や大阪という地域や歴史、生活文化も伝え、届けたい。それを私たちの民泊事業のミッションにしました」と山中氏。

レトロでモダンな宿泊施設は、訪日外国人観光客には、エキゾチックな空間となる。

 

#何よりも立地選定を重視

 

「物件選びの際には、立地や環境、間取りなどを総合的に見ますが、まずはアクセスの利便性、接道や周囲の環境を考えます。あまりにも狭い、密集しすぎている立地は騒音問題になる可能性が高くなるため避け、ある程度、ゆとりのある、日本らしい街並みや間取りを重視します」(山中氏)という。

大阪市内の中心部で、空港や観光地へアクセスがよく、複数の路線の最寄り駅から徒歩10分以内。新今宮、天王寺、鶴橋、谷町筋6丁目などで、これまでに空き家を8軒、民泊施設として再生した。

沖縄にも2軒、民泊を運営している。宿泊費は8,000円から3万7,000円。平均稼働率は85%。連泊する人も少なくなく、平均滞在日数は3泊。アジア圏(中国、台湾、韓国、香港、タイ)からの利用が多い。これらの国々と日本を結ぶLCCが増便され、利便性が上がったことも幸いした。オープン以来、軌道にのってくると月商80万から90万円がでるように。

今回、セミナーが行われた「集家」は、築100年の長屋3軒を、3つのテーマでリノベーションした。間取りは、緑色を基調とした4K(最大6人)紅色を基調とした3DK(最大5人)、紺色を基調とした3DK(最大6人)で宿泊可能人数は最大17人 。3戸一度に予約してもいいし、1戸ずつでも構わない。長屋ゆえに、大きなグループやファミリーに柔軟に対応しやすい。

 

 

リビングにハンモックがあったり、五右衛門風のお風呂があったり、内装や設備を工夫して楽しい雰囲気を醸し出している。赤い壁紙はとてもエキゾチックだ。古いミシンの台座とレトロなタイルを組み合わせた洗面台には思わず「カワイイ!」「懐かしい!」の声が上がった。

 

 

 

 

#良好な近隣関係維持のために努力も

民泊物件ではこれまで、利用者が騒音を出したり、ゴミ出しのルールを知らなかったり、時々近隣とのトラブルが報告されている。ネジコは、物件を探すときに不動産屋を通して市場にあまり出てこない物件、空き家を所有して困っているケースなどに注目するが、後々のトラブルを避けるために、地域住民の同意を得やすいこと、民泊事業開始後にトラブルに発展しないことを念頭にしっかりPRする。

「近隣世帯にきちんと説明を心がけ、リフォームするときに町会長を訪ねたり、見学会を開いてご近所のみなさんに見ていただくなど、真っ当なビジネスをきちんとした会社がやっているとアピールします」(山中氏)。

あまりにも反対が多いエリアでは、無理に事業展開をしないようにしている。

運営面では、フロントーサービスとして掃除やリネンの取り替え、緊急時の駆けつけなど、宿泊客にも近隣にも迷惑がかからないよう、きめ細かく対応している。「備品や設備を盗まれるケースはありません」という。チェックインまでに丁寧に宿泊客とやりとりをするなどの対応することがコツという。

この鶴橋の集家は、元々持ち主が相続後に取り壊す予定だったが、「建物を残して使いたいと申し出ると、むしろ喜ばれた」という。3戸を4100万円で購入。リフォーム費用は3件で2200万円、内装/設備に400万円を投資した。空き家を持ったまま手をこまねいていた元の持ち主にとっては、空き家の有効な活用法が見つかったし、近隣の住民にとっては、真っ暗だった近くの空き家に明かりがともった。民泊施設としてスムーズに周囲に溶けこみ、軋轢も起きないなら、周囲も歓迎する。訪日外国人観光客は、日本らしい宿泊施設に満足して帰国の途につく。〝三方よし〟となった空き家問題解決事例だ。

 

講師:山中一義氏

(株)ネジコ企画部長。遊興施設のイベント企画・デザイン会社を経て、貿易会社のネジコ社に勤務。旅好きの社員が多いことからインバウンド(訪日観光)事業として、大阪・沖縄で民泊事業を始めた。空間演出や現場での経験から、長家や古民家のよさを生かして1棟貸し民泊事業を拡大中。

(ライター:鶴見佳子)

 

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