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News & Columnニュース・コラム

セミナー報告 賃貸空き家の入居率アップの方法と契約の工夫

第6回   賃貸空き家の入居率アップの方法と契約の工夫
伊部尚子氏(株)ハウスメイトマネジメント ソリューション事業本部課長
2019年10月26日開催

 

空き家をどうする?解決のヒントが見つかるセミナーの第6回目。

空室が長期化する中で、どのように入居者を集め、長く住んでもらうか悩んでいる大家さんは少なくない。空室率50%だったマンションを、DIY可能賃貸に変えることで入居率を上げた事例を、賃貸住宅管理専業ハウスメイトグループの伊部尚子氏が紹介した。建築を学ぶ大学の学生も多く参加し、若々しく賑やかなセミナーとなった。

 

 

#空室増加で賃貸業も厳しい環境下に

 

登壇した伊部尚子氏は、管理戸数20万戸以上の賃貸住宅管理専業、ハウスメイトグループで、賃貸仲介営業、仲介店店長、管理の現場担当を経て、女性で初めての管理支店長となり、現在、ソリューション事業本部で課長を務める。東京都の足立区の空き家利活用プロポーザル選定委員、空家利活用促進事業コアメンバーとしても活躍し、空室の回避や空き家の利活用を進めている。
昨今、礼金収入の減少や賃料の値下がりからくる収入の減少、フリーレント期間や空室期間の長期化、広告料やリフォーム費用の増加、クレーム対応や訴訟の費用増加などが賃貸住宅のオーナーの経営を圧迫している。

「賃貸住宅のオーナーさんがきちんと利益を出さないと、管理会社の経営も厳しくなり、共倒れといった状況を招きかねません」と伊部氏は話す。

 

 

部屋を探している人が、実際に現地を見学するのは平均2.6物件、訪問する不動産会社も平均1.5社と年々少なくなっている。これは消費者がインターネットなどを利用して、あらかじめ自分で物件を探してから現地見学するためで、だからこそ「見学にきた時に逃さないことが空室回避の第1段階」と伊部氏は言う。

だが、賃貸契約にいたっても、入居後に滞納が発生したり、居住者のマナーが悪くて他の入居者が退去してしまったりなど、問題は少なくない。どうしたら、良質な居住者に長く住んでもらうか、魅力的な賃貸住宅をどう維持していくか、知恵を絞らなければならない。

 

#部屋探しの決め手は「家賃」

 

伊部氏によると、部屋探しの際の条件として、最も決め手となるのは「家賃」で、入居者が最も諦めた条件(妥協した条件)は「築年数」だという。つまり、家賃は妥協しないが、築年数は古くても我慢できる。そんな消費者の傾向は不動産業を営む人には朗報だと伊部氏は話す。

 

 

ただし、選んでもらうためには築古物件なら適切なリフォームが必要となる。一般的には、エアコンや独立洗面台、テレビインターフォン、浴槽の追い出し機能、温水便座など、人気の住宅設備を追加したり、刷新したりすればいいが、実はターゲットによって求める設備は異なり、どこまで投資すれば効率的な経営につながるのか見極めが肝心だ。

例えば、現在の浴室に対して「最低限」のリフォームレベルは、浴室のクリーニングと、シャワーヘッド・ホース・蛇口をデザイン性の高いものに変更すること。このリフォームで家賃に反映できる額は1,000円アップ程度だ。それらに加え、大型ミラー設備とパネルシートを1面張り替える「中規模」のリフォームを実施すると、家賃は2,000円アップに相当する。もっと「大々的」なリフォームを行い、最新のシステムバスにすべて入れ替えると、家賃反映額は6,000円となる。見た目には最も魅力的だが、入居者にとって家賃条件が最も譲れない点であることを考えると微妙だ。

 

 

 

効率的な投資費用であるためにも、入居者が「中規模のリフォーム程度でよい」(リクルート住まいカンパニー「賃貸契約者動向調査首都圏版」)と考えている現実を考慮に入れた方がいい。「長く賃貸業をしてきた大家さんには、これまでのビジネスでの尺度ではなく、今の入居者世代の常識が変化していることを意識することが大切」(伊部氏)と話す。

 

#賃貸オーナーも住み手の立場に立った発想を

 

「収納が足らない」「内装のデザインがよくない」「間取りの使い勝手が悪い」など、入居者が抱いている不満は、逆に見れば、賃貸住宅に対する隠れたニーズといえる。だが、住み手の好みや志向を予測するのはなかなか大変だ。賃貸住宅のオーナーにも「自分がそこに住んだらどうか」という発想が求められており、どうしたら収納量を増やせるか、内装のデザイン性をどこまで上げるか、改善できる住まいの使いやすさはどんな点かを考え、工夫をしないといけない。

いっそのこと住まい手自身に委ね、好みのDIYをしてもらうという手もある。DIYという言葉も内容も知っていて、関心がある人は36.9%とけっして低くない。国土交通省も「DIY型賃貸借」を後押ししている。

 

 

 

伊部氏は、築39年・空室率50%だった東京都練馬区のマンションを、DIY可能賃貸物件として再生する計画を立てた。まずはDIYのモデルルームをつくり、内装のリフォームを学ぶ講義を開催した。入居希望者には、完成したモデルルームを案内しながら、入居を勧めた。

あらかじめ賃貸DIYガイドラインでは建築基準法や消防法の内装制限をわかりやすく示している。「建築基準法に違反するようなDIYは勧められませんから。私が担当したマンションは、内装制限なしで、壁紙やペンキを不燃材料にしなくても大丈夫でした。オーナーも、DIYに初めて取り組むため、不安を払拭し、安心していただけるように、デザインと現場施工のサポートをつけました」とDIY可能物件を推進するためのバックアップ戦略をとった。
最初に契約したのは、部屋を自由にデザインしてみたいというカップルだった。そのカップルは材料を選び、協力しあってDIYした。キッチンや洋室にモザイクタイルや壁紙を貼ったり、ペンキを塗ったり、水回りスペースのクッションフロアを張り替え、洗濯機置き場に棚を取り付けた。デザイン能力の高い人だったので、禁止事項を限定的にしてそれを伝え、あとは自由にデザインしてもらったという。

 

 

結果的には、入居者には満足度の高い住み替えとなり、オーナーには家賃収入を1万円上げることができた。

DIY賃貸は、法律違反にならないよう、契約書の特約、合意書、申請と承諾書などでしっかりルールを決める必要がある。大掛かりなDIYでなくても、「DIY 可能壁」をつくり、その面だけ原状回復を不要とするなら一層手軽だ。

 

 

 

#魅力的なコンセプトで空室を回避

 

さらに、入居者の目をひく、他にはないコンセプトがあると、空室になりにくい賃貸物件となる。例えば「猫と共生する賃貸」だ。

昨今、ペットの飼育数でいうと、猫は犬の飼育数を抜き、空前の猫ブームが到来している。一人暮らしや共働きでも、犬のように寂しがったり吠えたりしないため、周囲に迷惑がかかりにくい。賃貸のペット可能物件は「犬のみ」が多く、猫飼育可能物件は意外と少ないからこそ、そこを狙える。現在では競合物件が少ないだけに、長期入居を狙える。

ただし、猫飼育可能な物件でも、飼育のルール決めと飼い主のマナーは重要で、ペット飼育の申請書と誓約書、飼育規則などを決めておくといいだろう。

 

 

もう一つ、子育てファミリーには、地域での近所づきあいも住まいを快適にする要素となりうる。良質なコミュニティが形成されている物件は子どもの成長のために必要かつ安心が得られ、長期入居につながるケースが少なくない。

伊部氏は、町会活動に熱心なオーナーがコミュニティ賃貸住宅をつくった例を紹介した。もともと木造が密集し、火災が多いエリアだったために、万一の場合に備えて顔が見える付き合いを重視したことから始まった。敷地内でバーベキューを楽しんだり、納涼祭などのイベントを開催し、大家さんや隣人たちと顔の見える付き合いを促進していくと、この環境は子育てにいいと長く住む人が増えたという。

 

 

空き家、空室を避けるために、大家さんが管理会社とともに、現代の住み手の立場や視点、消費傾向を考え、無駄なく積極的に攻めの経営をしていかなければならない時代となった。

 

 

講師:伊部尚子氏

(株)ハウスメイトマネジメント ソリューション事業本部課長。公認不動産コンサルティングマスター、1級FP技能士、CFP® 、賃貸不動産経営管理士、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会レディース委員、足立区空家利活用プロポーザル選定委員、足立区空家利活用促進事業コアメンバー、趣味はDIY

 

(ライター:鶴見佳子)

 

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