大正・港区空き家活用協議会 WeCompass
MENU

News & Columnニュース・コラム

セミナー報告 がんばる家主の空き家活用術

第2回   がんばる家主の空き家活用術
渡邉 宏樹氏(がんばる家主の会、㈱若竹寮代表)
2019年10月2日開催

 

空き家をどうする?解決のヒントが見つかるセミナーの第2回目。

老朽空き家が増加する中で、入居者を確保するのが難しくなる物件も少なくない。若竹寮代表の渡邉氏は、親から引き継いだ物件を改修し、新たな入居者を獲得し収支を向上させている。自社物件を毎回異なった改修方針で手がける中で、うまくいった点や課題を抽出し、その手法や建物活用用途も進化を遂げている。今回は、軌跡に沿ってどのような考えで改修を進めてきたかをお話いただいた。老朽空き家を抱えるオーナーの参加が多く、実践で学んできたノウハウに熱心に耳を傾けられていた。また、セミナー終了後は活発な質疑応答がなされた。

 

 

 

 

#魅力ある物件にすることで、入居者を集め、収益化を図る

私は、主に京都で、特に老朽化した古家を魅力ある物件として甦らせるような再生の手法について、実際に所有する物件の改修を手がけながら考えてきた。考え方としては、周辺環境など地域の特性を活かし、独特のおもしろさや味わいが感じられるような改修を試み、入居者を集め、収益化を図ることを目指している。

今日は、空き家活用について過去の改修実例とそこから得た活用術などについてお話します。

 

#劣化の激しい古家改修での気づき。原状回復を超え、好きな素材でリフォーム。

2010年頃から、古家の改修に取り組んできた。最初の連棟長屋のうちの1つを改修した事例では、激しく壊れていたため、予算と相談しつつ、オープンクロゼットに挑戦したり、台所の位置を変えたり、トイレを室内に移動したり、床を無垢材にした。そうしたところ、工事中から複数の方が関心を持ってくださり、賃貸募集中に入居希望者が現れた。画一的な原状回復をしなくて良かったというのが、私自身の気づきだった。この物件は、その後購入希望者が現れ、売却した。買いたい人が現れたことに驚いた。

振り返ると、自社物件の悪いところを列挙し「減点主義」で捉え、他の物件と比較し序列をつけていた。物件の持ついいところを伸ばし、募集でもそれを反映することが当時はできていなかったが、この改修によってそれに気づかされた。

 

次の物件も連棟長屋だったが、ここでは路地を活かして雰囲気づくりにも努めた。この物件でも、若い層に関心を持っていただき、結果として、入居者が途切れず、次に新入居者を紹介されるサイクルができた。改修費用も家賃収入の3〜4年で回収できるものとなった。

 

 

#設計士に依頼し、自分では思いつかないプランでの改修で人気物件に。

2015年の長屋の改修事例では、設計士に依頼して、より個性的な設計を試みた。自分がこの物件の個性だと思っている部分を形にしてくれるというのは設計士だからこそだ。自分では思いつかない発想に驚いた。多くの物件内覧があり、入居申し込みも複数あった。入居者の満足度は高いようで、退去があっても、即座に次の申し込みが入る物件になった。

 

#住宅を店舗にコンバージョン。新たな価値を見出す。

2015年の古家再生では、お客さん(賃借人)の要望で店舗へと改修した。スケルトン工事のみ自分が負担し、意匠は賃借人が負担した。店舗は内装へのこだわりがあるが、柱を抜くなど躯体に問題が出る場合もあるため、賃借人から挙がってきた設計内容をこちらでもチェックして調整することをした。現在、人気店になっており、こちらの収益性も良好な物件となった。長期利用を希望され、家賃収入からの工事費用の回収見込みは2.5年となった。物件の特性によっては古家でも店舗系に変身させることが可能なことがわかった。

 

 

 

 

さらに2016年複合用途で、住居の一部に飲食店が開店した事例。
仲介事業者と設計者とともに企画した物件で、シェア利用の店舗つき住居とし、耐震補強も講じた。

 

 

 

 

また、2017年の木造共同アパート一棟改修では、築古のイメージを払拭し、躯体を補強しつつ、機能性とデザイン性を持たせた改修を行い、住居とアトリエが混在するシェアアトリエとした。

 

こうした試みのなかで気づいたことの第一は、画一的なデザインにしてしまっては差別化できないということだった。一風変わった住まいでも、入居者に思い出がたくさん残る暮らしをしていただけるように工夫する。そして、そういう家や住まい方に興味を持ってくれる人は必ずいるということだ。

 

#「修繕して賃貸する」には、まず入居者の側から考えてみること

いま、空き家を持っている方にとって、古くなった物件をどうするのかは、きっと悩みの種でしょう。空き家があっても、活用ができない理由はいろいろとあるでしょうが、「できる方法」を考えてみることをお勧めします。ただ、どういう選択をする場合でも5年程度毎の見通しで計画していきたいものです。

「修繕して賃貸」する場合は、工事の前に、この地域ではどんな物件がどんな層に求められているのかのニーズについて考えてみる必要がある。

そもそも古家を修繕した物件は、「築年数、駅近、広さ」など通常の基準による不動産物件序列からは外れており、それだけでは選ばれにくい存在である。であればこそ、その物件にもとから「在る価値」を最大限に活用して、序列とは関係のない魅力を見出すことこそが重要だ。例えば空間の大きさ、気持ちの良いロケーション、周辺環境の良さ(個性的なお店・まち並み)、さらに通常の賃貸ではできない使い方の提案など。それらを活かした改修を試みることで物件の提供価値が生まれてくる。

同じ地域で面積・間取りが同等の物件の賃料を確認し、そこで、この物件は最安値で借りてもらうのか、最高値を超えられるのかなどを検討し、その提供価値を考えていく。どのような人に、どのよう借りてもらいたいのか、ターゲットを定めた上で、求められる価値を提供できる改修を試みることが大切だと考える。

 

#事業性を検討しつつ、専門家に相談し居住性の改善にも努める

工事費用は、事業性を検討した上で、設定賃料から逆算した予算内で見積もる。その費用を何年で回収するのか。また任意の時点で、いくらなら売却可能か、安全な借り入れはどの程度か、何年で返済できるのを検討する。もちろん補助制度なども十分に考慮する。

工事に当たっては、古い家の居住性の改善は「広く・暖かく・明るく」が一般的。現状の安全性を損なわない方法で、例えば壁を減らし、断熱し、開口を大きくすることやまた水回りの入れ替えも必要かもしれない。いずれにしろ、コストダウンしつつの機能の向上はありうるので、そこは工夫次第だ。さらに、どの程度の耐震補強が必要かは専門家と相談すべきで、やはり、設計工事の人とのコミュニケーションが大切だ。

 

そして大事なのは、こうした特徴的な魅力ある物件を理解してくれる募集先(仲介事業者)を選ぶこと。賃貸借の契約については家主自身がしっかりと理解し、住まい手感覚での物件管理や素早いトラブル対応が必要になる。とはいえ、すべてを自らの手でやるのは難しいので、各専門家・事業者といかに協力関係を築くのかが重要。共存共栄の意識を持って、家主としての責任がある判断が求められてくるでしょう。

 

修繕して賃貸するのは、「楽して、収入」とは言い難いかもしれない。

しかし、想像できないほど難しいことでもない。空き家が修繕されて、素敵な家になり、素敵な人が使い、素敵なまちになる。そして引きつがれていく。こうした希望ある賃貸経営は決して夢ではない。それが、空き家活用の選択肢のひとつとなることを私は願っています。

 

 

講師:渡邉宏樹

がんばる家主の会、㈱若竹寮。注文住宅建設会社に就職後製造業に転じ、同僚とともに会社設立。同時に、父が引き継いだ賃貸業を手伝い始める。父の他界に伴い賃貸業を引き継ぎ、留学生を中心入居者に運営する。築50年前後になる木造の家屋・共同住宅の管理と再生を行っている。

(テキスト記録者:橋本 護)

 

港大橋