2019年12月10日に大正会館にて、関西大学住環境デザイン研究室による「まち歩きツールで遊んで学ぼう@大正」を開催した。
私たち「大正・港エリア空き家活用協議会」のミッションは空き家活用を通じて街を楽しく元気にすること。
そのためには街の良さやおもしろさを知ることが基本。そこで、街を知るためのツールとして関西大学住環境デザイン研究室が開発したまち歩きツールを発表いただいた。
その後、発表者と参加者がワークショップ形式でツールを発展する工夫を話し合った。
1 まち歩きツールの紹介(セミナー)
#大正区で実施したまち歩きプログラムの紹介
まち歩きの大筋のルールは下図の通り。
#班のラインと全体ラインを作って、地図を渡す。
まち歩き班は区役所で集合し、グループラインを作る。一つは、今回一緒に回るまち歩き班のライン。3〜4人でひと組とした。もう一つは参加メンバー全員と仕掛け人で構成される全体ライン。
次にまち歩き班ごとに大正区の地図が渡される。地図には細かい道路や目印(郵便局や銀行など)の情報量をあえて減らす。自分で歩いて宝探しをするためだ。
また、参加メンバーにはあらかじめ街の下調べをしないように伝えておく。これは、先入観なく街を巡る中で、独自の観察眼を持って街に潜む「?(はてな)」や面白いところを発見してもらうためである。
まち歩き班は、もらった地図をもとに仕掛け人から出されるミッションに挑戦しながら、他の班と得点を競う。
#さあ、出発。仕掛け人から、30分ごとに計11個のミッションが送られてくる。
この時は各人レンタサイクルを借り、街に繰り出した。
*ちなみに大正区は街が平坦であり、道路も整然としているため自転車でのツアーに向いている。また、自転車でのツアーは比較的広範囲を短時間で回ることができる。しかし、交通安全性への配慮などが必要となる。プログラムとして、徒歩でも自転車でもどちらでも組み立ては可能である。
地図に書かれたスポットはどこから回ってもいい。
#(例)シーサーを探せ
事前に仕掛け人が調べておいた大正区のスポットをもとに、まち歩き班にミッションを与えていく。
今回の大正区のまち歩きでは、「商店街でシーサーを探せ」「地元っぽいお店でご飯を食べよ」「水辺で面白いものを探せ」「千歳橋の渡船に乗れ」などなど。
まち歩きを通じて自らが街のスポットを探していく。早くミッションをクリアするためには、地域の人に話を聞くことも有効だ。
「商店街でシーサーを探せ」では、仕掛け人が全く知らなかったようなシーサー、見つけにくいシーサー、変わり種シーサーなどを探した場合は得点が高くなる。得点は複数の仕掛け人が話し合って決める。また、地域の人に話を聞くときに「なぜ、大正区にはシーサーの看板や置物が多いのか」を教えてもらい、自ら深掘りすることもできる。これは後のミッションにも役立つ。
また、最初はすべてのミッションが明らかにされていないため、とにかく気になるモノを片っ端から撮影しなければならない。そうしないと、ミッションが出たときに、前に該当するモノに遭遇していた場合は戻ってやり直さないといけないので、時間の無駄になる。この行為によって、ミッションに限らず街に対する気づきや発見が出てくる。
#クリアの状況を写真で撮影し、全体ラインで共有。
ミッションをクリアしたら写真を撮影し、ミッションごとにまちづくり班のラインにアップロードしていく。仕掛け人は状況を見つつ、全体ラインにリアルタイムで各班のクリア状況を実況する。そうすることで各まち歩き班の進捗を全員が知ることになる。このことで、競争心理も働く。
#チームテーマから都市を読み解け。
先に“後のミッションにも役立つ”と書いたが、後半のミッションでは、「チームテーマから都市を読み解け」が与えられる。このミッションを解くためには、各まち歩き班は今までのミッションで調べたり感じたりしたことを並べてみて、街のテーマを設定し、どういった都市のイメージを持ったのかを提示する必要が出てくる。当然ながら、街を知らない人の情報だけでは都市を読み解くことは簡単ではないため、地域の人からいろんな話を聞き出せた班が有利になる。
つまり、このまち歩きツールの斬新さは、単純にガイドから説明を受け、与えられた情報をインプットしていくものではない。自ら街の資源を調べ、地域の人に話を聞き、最後に街の特徴を自ら考えるという、より主体的でかつ、インプット(街の情報の入手)だけでなくアプトプット(街を読み解く)も求められるものだ。
#主催者(仕掛け人)に逆ミッションを与えよ。
最後は、まち歩き班から主催者にミッションを与える。このことで、主催者は参加者の興味や視点の独自性を知れ、場合によっては新しいミッション項目が発見されるかもしれない。
#まち歩きを共有する。
まち歩き終了後は参加者全員で集まり、答え合わせをする。
仕掛け人から、ミッションの意図の説明、大正区の歴史的な特徴、地形的な特徴などを説明する。さらに、各班の順位、点数の発表を行い、感想を共有する。
競争をすることでワクワク感が高まり、班で力を合わせてミッションをクリアすることで、その時知り合った他人同士が仲良くなることも期待したい。
2 ツールについて感想やアイディアを話し合い、最後は発表しよう(ワークショップ)。
学生によるまち歩きツール発表の後は、参加者を班わけして意見交換をし、その結果を発表して共有した。
「まち歩きゲームのいいところや感想、活用シーンを語ろう」についての意見は下記の通り。
・参加者が主体的に関われるところがいい。
・曖昧さが良い。
・経験を通して情報が入ってくるので、印象に残る。
・学生、観光客、職員研修などなど、シーンに応じてミッションや歩く範囲を変えれば、色々利用できそうだ。
・全くガイドなしで自分で街の資源を見つけて話し合うプログラムに参加したことがあるが、これだとハードルが高い。今回のプログラムは、ミッションが与えられるため、ある程度手がかりをもとにまちを歩けるのでバランスが取れていて良い。
・早速、やりたくなった。
・ラインを持ってない人はどうするのか。また、プライバシーを考えたら、別の伝言方法も考える必要がある。
「街をゲーム感覚で遊べるアイディアを考えよう!」で出たアイディアは以下の通り。
・30歳代の美人を探せ。
・地域のボロい空き家を探せ。
・地域のふれあい喫茶に潜入せよ。
・老人憩いの家などでカラオケをして、得点を競う。
・季節ごとにマップを出す。
・細い路地を探し、一番細い路地を見つけたチームが勝利。
・このゲームをアプリ化する。
・Googlemapに載せていく。
・ポイントをゲットして街で利用できる仕組みを作る。
・学校の授業で活用して、気づきや学んだことを生徒がカードや本にして、記録に残す。
・範囲を狭くして、障害のある人など多様な人が参加できるように五感を使ったミッションを作る。
最後は関西大学住環境デザイン研究室の岡絵理子教授に総括をいただいた。
「ここまで練られたプログラムだと知らず、正直驚いた。今回のツールは公表し、別のエリア、学校や自治体などでもどんどん利用してもらいたい。また、ワークショップで皆様からでたアイディアを追加すれば、より面白いまち歩きを提案できると思う。手始めに、学生らと別のエリアでもやってみたいと思う。」
講師紹介:
新開夏織(修士2年)
平松孝介(修士2年)
堀裕貴(修士2年)
後藤奏真(学部4年)
船戸教隆(学部4年)
岡絵理子研究室(関西大学環境都市工学部建築学科 住環境デザイン研究室)
住宅・集合住宅から暮らしを通して考える、都市空間デザイン。
建築、土木、オープンスペース、公園、道、人が暮らすための心地よい空間と、実現させる仕組みの研究を行っている。
(ライティング:川幡祐子)