大正・港区空き家活用協議会 WeCompass
MENU

News & Columnニュース・コラム

セミナー報告 今ならまだ間に合う財産の引き継ぎ方〜相続と家族信託〜

第1回 「今ならまだ間に合う財産の引き継ぎ方〜相続と家族信託〜」
池内宏征氏(司法書士法人リーガルエスコート代表)
2019年10月1日開催

 

「空き家をどうする?」をテーマに、多角的な解決のヒントが見つかるセミナーを令和元年10月から11月に計7回開催した。

10月1日には「今ならまだ間に合う財産の引き継ぎ方〜相続と家族信託〜」と題して、司法書士法人リーガルエスコート代表の池内宏征氏が登壇した。池内氏は、今回のようなセミナーや法律相談会を1年に60回以上開催するという。今回の会場、港区民センターでも真剣にメモをする人が目立ち、関心の高さがうかがえた。

 

 

#空き家となった実家は劣化していく

進学や独立、結婚を機に実家を離れる人は多い。親が亡くなったり、高齢者住宅に住み替えたりした後に、空き家となった実家をどう処分するか、あるいはどう再生すればいいのか…。住宅は、誰も住んでいなくても維持・管理に手間と費用がかかるし、手入れしなければ劣化し、風水害の被害を受けたり、近隣に迷惑をかけることも。〝空き家となった実家をどうする?〟と悩む人は少なくない。

「元気なうちは、親も自分で家の管理や売却ができ、預貯金や収益不動産など財産の管理や運用ができますが、例えば認知症になって判断能力が衰えてくると、契約行為やビジネスができなくなります」と池内氏は話す。

現在、男性の平均寿命は80.98歳、女性は87.14歳(厚生労働省「平成28年完全生命表)。1950年に男性58.0歳、女性61.5歳だったことを振り返ると、この70年間に国民の栄養状態がよくなり、医療や介護のレベルが大きく上がったことがわかる。

 


我が国の平均寿命の推移

 

平均寿命はさらに伸び、2060年には男性84歳、女性90歳を越えると予想されているが、問題は健康で暮らせる「健康寿命」が男性72.14歳、女性は74.79歳と低いことだ。現在、平均寿命との差は男性8.84年、女性12.35年。実は、この健康寿命は30年前と今とであまり変化がなく、今後、長寿化が進めば進むほど、平均寿命と健康寿命との差が広がっていく。九州大学大学院医学研究附属総合コホートセンターによると、2025年には約730万人、高齢者全体の20%が認知症患者になると推計されている。

 

平均寿命と健康寿命の差

 

 

#認知症になるとできなくなること

 

認知症などによって判断能力が衰えると何ができなくなるのか、それを具体的に知らない人は意外と多い。親が認知症になった時に、「親の銀行口座が凍結されて、配偶者や子どもであっても、お金を引き出すことができない」ことを53.7%が知らなかったし、「土地の売買など契約行為が被相続人にはできない」ことを62.7%が知らなかった(一般社団法人家族信託普及協会「相続・家族信託に関する調査」)。

認知症を患っている親の介護や看護のために親自身のお金を使いたいのに、親名義の定期預金や有価証券を子どもが解約したり、もう住まなくなった親名義の実家を売却することはできない。昨今は、高齢者にかかわる詐欺事件も目立ち、それらを防ぐ観点から金融機関などの本人確認も厳格になっている。「親が認知症になったり亡くなってからあわてるのではなく、元気なうち、生前から親子間で『家族信託』を交わすことをお勧めします」と池内氏は話す。

 

親が認知症になった場合の財産管理

 

#親の意思を子に伝える家族信託

 

主な財産には預貯金や有価証券、自宅があり、賃貸住宅を経営しているなら、そこから上がってくる家賃収入なども財産の一つ。これらについて、親が子に、法律に基づいて「自分の財産の管理を任せる」「お金の引き出しや家の管理をやってほしい」と公正証書等で交わして託すのが「家族信託」だ。

家族信託は、「委託者」「受託者」「受益者」という3つで構成される。「委託者」とは財産を所持し、管理を託す人、主に親だ。
「受託者」は、委託者から託されて財産の管理や処分を行う人、主には子どもだ。

「受益者」とは、その信託財産の持ち主で、その経済的な利益を得られる人、つまりは親自身。財産の管理を子に信託したとしても、財産から得られる利益は、生きている間は親のものだ。親が賃貸アパートを経営している場合で、自分が認知症になった後、子に家族信託をすると、子は親に代わってアパートの賃貸借契約や退去後の修繕手配など管理業務を行う。このアパートは親の財産なので、家賃収入は親のものだ。子は親から信託されているので、その親の収入から親の生活費や介護費用を親に代わって引き出して使う。

「贈与」と異なり、家族信託は、委託者(親)が、受託者(子)に、お金や不動産の管理や処分権限を与えるが、財産の持ち主は親(受益者)なので、贈与税や不動産取得税は生じない。

信託が終了するのは、「親が死んだ時」もしくは「親と子が終了すると合意した時」だ。死亡後に、財産の承継先をあらかじめ指定できるので、「自分の死亡後は子に財産を承継する」と決めておけば、家族信託は遺言と同じ機能をもつ。

 

家族信託スタート