大正・港区空き家活用協議会 WeCompass
MENU

News & Columnニュース・コラム

セミナー報告 空きスペース貸しませんか? ~調査結果と貸し方提案~(前半)

第7回 空きスペース貸しませんか? ~調査結果と貸し方提案~
平成29年11月1日実施
三浦 研(京都大学建築環境計画学講座教授)研究室
水谷光佑(㈱クル取締役代表)

 

最終回は、今までのノウハウ提供型セミナーとは異なり、空き家活用の提案型セミナーとなった。「地域にある空き家を1棟丸々空けるのは難しいが、建物の一部を貸すことは貸しやすいのでは」。そんな仮説をもとに大正区の商店街を対象に、アンケートを実施し、空き家・空きスペースの活用意向を調査し、その結果をもとに全国の先進事例や新しい活用方法を提案した。

*こちらは前半です。後半部分はこちら

 

 

1 建物の一部を貸して、まちに賑わいを取り戻す試み 
  三浦 研(京都大学建築環境計画学講座教授)

 

#商店街の再生に向け、負のスパイラルを脱するために

いまは、大家さん苦境の時代。人口減少社会で競争は激化している。家賃収入は減少し、反対に広告料などの負担は増大。昔と違い、ネットで閲覧できるようになり、入居者の要求が増大し、リフォーム工事の費用なども増加している。

商店でも同じような傾向。いまはデパートも専門店やネット販売に負ける時代で、百貨店も商品だけでなく体験で客を呼び込む時代だ(写真1)。大規模店舗でも、昔は分かりやすさ優先の単純な構造だったのが、いまは連続する構造を取り入れた回遊性が重視される。また、一定数の店が短期間で入れ替わっていくのは、来訪者を飽きさせないためだそうだ。

 

写真1  大型百貨店も生き残りをかけて,体験を重視した店舗づくりを進める(大丸心斎橋店)

 

 

地域の商店街の現状は、高齢化が進み、シャッターを下ろした店が増え、賑わいの喪失が顕著だ。しかし、新しいお店もなかなか入ってこない。空いているのに、店を貸せない事情としては、「人がいないから商売にならない」「人手が足りない」「ここはお店を出しても成り立たない」「高齢で資金がない」「住んでいるから貸せない」「知らない人には貸せない」など。でも、このままでは負のスパイラルを脱することはできない。

 

#事例をもとに、空き家の新しい活用方法を考える

商店街に人がいないのなら、空き店舗を逆手にとって、ホテルをつくり,交流人口を増やそうという試みを紹介する。大津百町の「講」という名前で、築100年以上の7軒の町家をリノベーションしたホテル。建築家の竹原義二氏が設計に携わり、断熱改修も実施し、町屋とは思えない快適な宿泊が実現している。

まち全体を大きなホテルとして見立てて開発した例は、東大阪のSEKAI HOTEL。ここは、町工場にインスパイアされたインダストリアルモダンの内装が特徴だ。

人手不足に対する省力化の試みもある。船橋市の「cafe de STELLA(すももカフェ)」は、団地内の空き店舗を活用した介護事業者によるベーカリーカフェである(写真2)。月に1回、認知症のある利用者がスタッフを務めるカフェを実施。そこでは、パンの画像をスキャンして代金の合計が出るレジを導入し、精算を誰でもできるようにしている(写真3)。高齢社会でも働きやすい環境整備の一例といえる。

 

写真2 月に1度、認知症カフェが開催されるベーカリーカフェ(「cafe de STELLA(すももカフェ)」)

 

写真3 高齢者でも働きやすいように最新のAIレジを導入(「cafe de STELLA(すももカフェ)」)

 

高齢社会に即した商店街活用事例として、阪急神崎川駅近くの三津屋商店街でのデイサービス施設がある(写真4)。商店街の経営者は、当初、デイサービスセンターが商店街に開設されることに否定的な考えを持つ人もいたと聞く。本当はお店に入ってほしいと願っていたから。しかし、開業に伴って来訪者が増えてくると、デイサービスのついでに商店街で買い物をする高齢者も増えて、商店関係者の意識も次第に変化したという。ついに空き店舗を活用して商店街の中にトイレのある休憩所や商店街来訪者のサロンとして「みつや交流亭」が実現した(写真5)。福祉的な活用から商店街が活性化した事例といえる。

 

写真4 商店街にデイサービスが入った神崎川商店街(大阪市淀川区)

 

写真5 デイサービスに続いて一般の人の休憩、トイレ利用のために開設された「みつや交流亭」(大阪市淀川区) 

 

また、東京世田谷の銭湯「新生湯」は、昼間はデイサービスというユニークなデイサービス施設だ(写真6)。銭湯の常連客が高齢化してきて、迎えに行くことから始まり、それがデイサービスになった.デイサービスにも通えなくなった高齢者のために,最後は近所に高齢者施設を建設して運営している。これは地域のニーズに商売が見事に対応した事例といえる。

 

 写真6 昼間はデイサービス、夜は銭湯。奥に見えるのは新生湯が経営する高齢者住宅(東京都品川区)

 

 

そのほか,「ごちゃまぜ」の支援が成功している事例を紹介したい。石川県の佛子園という社会福祉法人は,これまでシェア金沢,B‘s・行善寺(写真7,8)など、高齢者ディサービス,障がい者就労支援,コミュニティセンターを混ぜた「ごちゃまぜ」の支援で有名な法人である。高齢者ケアに含まれる,レクリエーション、食事、入浴、体操をすべて本格的な水準で行い,地域の人が喜んで来てくれるレベル高めたうえで,障がい者の就労の場として活用することで採算がとれるように工夫している.具体的には,食事をレストランレベルに,歌を本格的なカラオケにする.体操はおしゃれなフィットネスにする.入浴は本物の天然温泉にするなど,一般の人を呼べる水準に高めて、地域の人に開放して,さらにその場を就労支援の働く場所に活用する.こうして一般的には採算が合わせにくい使い方でも魅力的で採算のとれる形にしながら,複数の空き家を活用した街づくりを輪島で展開している(写真9)。同じ発想に立てば、採算があいにくい商店街でも、活用化させる方法が見つかるはずだ。

 

写真7 高齢者、障がい者、地域の人が「ごちゃまぜ」で活躍するコミュニティ施設(B`s・行善寺)

 

写真8 B`s・行善寺のデイサービスの食堂を兼ねたレストラン

 

写真9 複数の空き家を改修して、エリアで「ごちゃまぜ」を進める(輪島KABULET®プロジェクト)

 

#空き家活用のために、地域的な事業展開の可能性を探る

商店街が新陳代謝しにくい理由は、商店のオーナーが高齢化して、投資する資金と、投資を改修する時間がないことに一因がある。そのため、高齢の方ではなく、新たな担い手い登場してもらう必要がある。そこで信託的な運用が有効になってくる。例えば、所有者が改修費を負担できない場合に、10年程度の定期借家契約を結んで、第三者が改修費を投じて改修、その費用は契約期間で回収し、それが終わると賃貸借関係に切り替わるというもの。高齢の所有者でも、自己資金がなくても,この方法なら10年程度できれいになった店舗を手に入れることが出来る。

京都市の粟田学区の事例では、空き家所有者と活用希望者の間を自治連合会の「空き家対策実行委員会」がつなぎ、改修費の投資者を面接・公募するなどして、地域活性化とあわせた空き家流通促進事業を行っている(図1,写真10,11)。

 

図1 粟田学区の空き家流通促進事業(出典:都市住宅学会業績賞HP) 

 

 

写真10 粟田学区の地域主導の空き家流通促進事業(改修前)

 

写真11 外部オーナーの資金で再生されたゲストハウス(改修後)

 

 

これらの例も踏まえ、大正区での私たちの試みは、地域的な展開を模索するものだ。㈱クル、(一社)大正・港エリア空き家活用協議会などと協働して、商店街での調査と活性化プロジェクトを企画・展開しているところだ。(後半につづく)

講師プロフィール:
京都大学三浦研
京都大学大学院工学研究科 建築学専攻 建築環境計画学講座教授。人の行動や心理にもとづく建築・施設設計・研究に取り組む。2019年度国土交通省人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業評価委員ほか、「グループハウスあまがさき」,「ニッケてとて加古川」「ニッケあすも市川」などの計画・設計にかかわる。 2018年建築学会著作賞(共同)、岡山県倉敷市出身.建築学科への進学は高校一年生終わりまでを過ごした倉敷の街並みと建築(建築家・浦辺鎮太郎(京都大学OB)による)の影響.博士課程で出会った阪神淡路大震災後のケア付き仮設住宅,グループハウス尼崎の実践から,医療福祉施設に研究が広がる.

SNSアカウント

Instagram

Instagram
港大橋